teresuwatebesu's blog

ときどき宇宙のことを考えるといいらしい

生活の澱

どうしてだろう。私はあの人をあんなに好きだったのに。恋愛に溺れるようなタイプではない私が、あんなにも熱く、それでいて静かに燃える炎のような気持ちを抱いていた。愛してるとさえ、言っても恥ずかしくはないと思っていた時期さえあった。それなのに。


たとえばほんとうに些細なこと。
バスタブの二枚の蓋を、いつもいつも大雑把に重ねた状態で閉めること。

詰まりやすい洗面台に痰を吐くこと。

トイレのペーパーが、芯だけになっても補充しないこと。



生活というのはなんてかなしいものなんだろう。
あの頃夢みていた(それでも、冷静さが欠けていたとも思えない)私には許せると思っていた。
彼の振る舞いや心の逞しさがあれば、その大きな長所さえあれば、たとえこの先、彼のだめなところを知っても打ち消せるとおもった。


一緒に暮らしはじめて落ち着いてくる頃に、少しずつ見えてくるあまりにも小さな小さな隔たり。
お互いがそれぞれにそれぞれの暮らしの中で築いてきた習慣。

相手に悪気がないことが、なおさら私の気持ちをささくれさせる。

それはちょうど淹れたての紅茶に溶かした砂糖のように、かき混ぜているあいだは目にはほとんど見えず、味も甘くて美味しい。
だけれども、時間が経つと底のほうに沈んで、砂糖がそれとわかるようになってしまい、もう一度かき混ぜない限りあの甘さは得られなくなる。




もう一度、私がスプーンを使ってかき混ぜればいいことなのだろうか。

それは冷めてしまった紅茶でも、叶うことなのだろうか。